もう、そういう時代に入っている?あるカレー屋の話

東京・京橋にある「京橋屋カレー」は、私の友人が夫婦で営む店。

時々食べに行くと、またすぐに食べに行きたくなってしまうので、なるべく行かないようにしている(笑)。

「え!お友だちの店なのに?」と、驚かれそうだが、

行きたいから行く。という欲望に忠実な行動を取れば、確実に肥満になれる自信があるからだ。

というのは、ここは、とにかく米が進む。

品種、仕入れ先にこだわった米自体がうまいこともあるのだが、

ついついおかわりがしたくなる(デフォルトのライスの量が多いにも関わらず)ほど、米を欲するカレーになっているのだ(個人的感想)。

もちろん、味が異常に濃いなどではない。むしろ全体としてはやさしい味。

小麦粉を使わず、油は米油を使っているので、胃もたれすることもない。

私がいつもオーダーするのは、トキエ(トリ、キャベツ、エビ)カレーとキーマのツインカレー(1,800円(税込))。

カレーにしては高い?

そういう言い方をすると、店主が悲しい顔をします。

だって、素材にこだわり抜いているから。

十数年前、カレー屋を始めるために、仕入先をいろいろ回っている頃、こう言われて彼は悔しい思いをしたそうだ。

「カレーに使うなら、この鶏肉でいいじゃないか?」

「カレーだったら、この玉ねぎで十分だろう…」

そういう心無い人々の言葉を無視して、彼は自分が追い求めるカレーの味のために素材を吟味し、作り方にもこだわり抜いて、今日もカレーを作り続けているのだが…

この店は、少し前からある問題を抱えていた。

それは、タバコの臭い問題。

スパイスの香りを台無しにするタバコの臭いを持ち込まれないために、かなり強力にタバコの臭いNG!をアピールしていたのだが、それでも毎日のように喫煙者が来店し、その都度退店をお願いするということになっていた。

ポスター

テレビやネットでも取り上げられたので、ご存知の方もいらっしゃるとかもしれないが、この店はタバコNGの徹底ぶりが半端ない(Yahoo!ニュースがここで見られます)。

店内での喫煙は当然NG(この辺は最近普通になってきた)だが、喫煙者であるだけで、衣服や髪の毛についたタバコの臭いを店内に持ち込むという理由で入店NG。

さらには、非喫煙者であってもタバコの臭いがする人(例えば、家族の誰かが家でタバコを吸うような人。喫煙OKの喫茶店にさっきまでいた人など)は入店できない。

もちろんこれは、カレーの命とも言えるスパイスの香りを大切にしたいという気持ちの表れではあるのだが、

店主が、タバコから出る化学物質に対するアレルギーがあることも大きい。

もちろん料理人なので嗅覚は優れているのだが、

タバコを吸う人などが、店に入ってくると首の後ろあたりにあるセンサーが、「ピキッ!」と反応するらしい(本人談)。

このタバコの臭い問題と日々向き合うことで、神経をすり減らした店主の体調は悪化。一時は、営業できない日々が少しずつ増え始めていた。

このままでは、カレーを作れなくなる!

うちのカレーを楽しみにしてくれている、お客さまに食べてもらえなくなる!

と、悩んだオーナー夫妻は、どんな決断を下したのか…。

それは、『会員制』だった。

タバコとは無縁の、自分たちが来て欲しい人たちだけに来てもらう。

そんな風に、思い切って客を絞ったのだ。

もちろん、不安はあったはずだ。

でも、自分たちが一番大事にしているカレーの香りと味、そして、大切な常連客を守るための勇気ある決断だった。

で、今、お店がどうなっているか?

正直、以前に比べれば売り上げも下がったりはしたようだが、テイクアウトの販売が始まったり、お土産用の冷凍カレーにお試しサイズが追加されたり、頑張っているようだ。

そして、何よりも二人が、嬉しそうに笑っているのだ。

少し前に行った時も、「なんか、表情が明るくなりましたよね?」って言ったら、

「そうなんですよ!主人の体調も本当に良くなったんです!」と、うれしそうな奥さま。

そんな二人を見ていて、世界の渡部ことアンジャッシュの渡部健さんの言葉を思い出す。

「“客は店を選ぶ時代から店に選ばれる時代”になってる」

本当に、そういう時代に入ってきているんだなぁと、身近な店の変化によって強く感じた出来事だった。

なお、会員になりたい方は、京橋屋カレーのFacebookをご覧ください。

さっき、Facebookを見たら、月ごと?に募集がある様子。

いや、食べログを見ると、いきなり行っても奥様からの質問に答えてOKが出れば食べられるという情報もある。

「なんだよ!どっちなんだよ!すぐにでも食べたいのに!」という方は、私に言ってください。

時間が合えば、ご案内します。

もちろん、タバコを吸わない方限定で。

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shoji
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