台風が関東の海沿を通り過ぎた8月9日。日経新聞が主催する「地方創生フォーラム」を受講してきた。
今回のテーマは『廃校利用』。
平成14年〜27年度までの14年間で、廃校となったのは、
6811校。
そのうちの1260校は、まだ用途が決まっていない(平成27年度)。
このように日本全国で増え続ける廃校を利用し、新たなビジネスにつなげるだけでなく、地域の交流も生み出している方々のお話を聞いた。
フォーラムは二部構成になっていて、
第一部は、隈研吾さんの基調講演につづき、3つの事例(石巻市雄勝町のMORIUMIUS、佐渡市、尾畑酒造の学校蔵、遠野みらい創りカレッジ)紹介。最後に事例を紹介された方々と、クリエイティブディレクターの山本高史さんによるパネルディスカッションでまとめ。
第二部は、「“人が集まる場所”としての廃校活用」をテーマにしたトークショーが、雑誌[BRUTUS]編集長の西田 善太さんの司会・進行で行われた。
第一部で紹介された3つの事例は、どれも意義のあるもので、ある意味成功もしている様子。
詳しい内容は、日経の動画コーナーでチェックできるので、ご興味がある方はチェックしてください。
休憩時間を合わせて5時間の内容を、ここで説明するのは無理なので、個人的に(極めて個人的に)印象に残った話を3つだけ書こうと思う。
1つ目は、1部のパネルディスカッションでクリエイティブディレクターの山本さんが話していたことだ。
山本さんは、『BACK TO 廃校プロジェクト』の取材で、ある廃校を利用した施設を訪れた時、ちょっと不思議な感覚に包まれたらしい。
他のスタッフが撮影をしている時間を利用して、カフェとして運営されているスペースで原稿を書いていたらしいのだが、ふとトイレに立った山本さんは、トイレのある場所を店舗スタッフに確認することもなく、廊下に出たのだ。
それは、『だいたいこの辺にトイレはあるはずだよな…』という、自分の奥底に今でもある記憶に従った行動だった。
そうすると、思った通りの場所にトイレはあり、『水飲み場は、あの辺だよな…』と歩いていくと、やはり思った通りの場所に水飲み場もあったそうだ。もちろん、山本さんがその学校を訪れたのは生まれて初めてなのだが…。
「これほどまでに、みんなが共通の記憶として持っている施設って、学校の他にないんじゃないかな?って、その時思ったんですよ…」
と、いう山本さんの言葉に、深く納得している自分がいた。
2つ目は、[BRUTUS]トークショーで聞いた、grafのクリエイティブディレクター、服部 滋樹さんのお話。
これは、今回の「廃校」というテーマとは離れるのだが、服部さんが話題の中で少し触れた淡路島の“自給率”の話に、自分は思わず食いついてしまった。
淡路島の食料自給率は、およそ130%。そして、エナルギー自給率も100%を目指して、さまざまな取り組みが行われているらしい(詳しくはこちら)。
ここで、改めて思ったのだ。
このブログで何度も触れている村上敦さんの提案って、十分実現できるんじゃん!って。
もちろん、自然環境などの問題があるから、全てのまちでできるわけではないだろう。でも、可能性は十分にあるはずだ。
この話をした服部さんも、
「だから、淡路島って、独立できちゃうんですよね!」
って言っていたけど、地方のまちがそんなふうに自立し始めると、大都会とも対等に張り合えるというか、むしろ立場が上になってしまうように思えて、ちょっとうれしい気分になった。ま、そんな単純な話ではないのだろうけど…。
そして3つ目は、同じく[BRUTUS]トークショーで、音楽家でディレクターの坂口 修一郎さんが話していたこと。
坂口さんは、2010年から鹿児島で開催されている「グッドネイバーズ・ジャンボリー」の主催者なのだが、
そのフェスティバルで、地元のおじいちゃんと酒を酌み交わしながら話した時に、こう言われたそうだ。
「地域の活性化とか…そんなもんはせんでいい…」
坂口さんが、「どうしてですか?」と尋ねると、
「こうやって、あんたたちがしてくれても、そう長く生きられない自分たちには、何にも返すものがないから…」
坂口さんが、黙って聞いていると、そのおじいちゃんは、こう続けたそうだ。
「でもな、普段なら誰も来んようなこの学校(廃校)に、こんなにも多くの人が来てくれて楽しかった!という記憶は、子供たちの中にいつまでも残る。そういう意味では、ありがたいと思ってる。ありがとうな…」
その言葉を聞いた坂口さんは、思わず泣き出してしまったそうだ。
やっぱりおじいちゃん、嬉しかったんじゃない…(ヤバイ、書いていて涙が出てきた)。
とはいえ、地元の人が決して望んではいない形で進められる、「地方創生」という名の補助金の無駄遣いなども決して少なくはないのだろう。
このブログで何度も触れる村上敦さんも、
「東京の劣化コピーを作っても何の意味もない!」と、訴えていたし。
それぞれの地域の人々が望んでいる形で、解決策を見つけなくては意味がないのだ。
改めて、「地方創生」というものの難しさと意義を実感した5時間だった。
この他にも、ニューヨーク在住ライター・佐久間 裕美子さんのデトロイトの話も面白かった。ぜひ、日経の動画サイトで観てみてください([BRUTUS]トークショーの映像は、こちら)
最後に、山本さんが話していた素敵な話しをもうひとつだけ。
「大阪の廃校を訪れた時、ミーツという雑誌の編集長が言ったんですね。『この学校で盆踊りをやりたいんですよね!』って。え?盆踊り…って最初は思ったんですけど、ああ、確かに昔は学校で盆踊りをやったりしたな…。って、思い出したんです。そうなんですよね。学校って誰もが気軽に行ける近さにあって、どこかみんなを引き寄せる力を持った、1つのパワースポットなんですよね…」
なるほど!学校は人を引き寄せるパワースポットなんだ。
そんなパワーを活かして、何かを始めたい方へ。ここに情報があるようですよ。
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