「旬八青果店」と「街の内科外科クリニック」の取り組み

昨日、旬八青果店の初のフランチャイズ店舗となる「旬八青果店 目黒柿の木坂店」で行われた、トークイベントに参加した。

この店舗のオーナーは、「街の内科外科クリニック」の塙 勝博先生(内科医)と新谷 隆先生(外科医)の両院長。

なぜか自分は、内科・外科であるのを歯科医院と勘違いしていて(完全な思い込みだったなぁ)、冒頭、「今日は、どんなことを聞きに来られたんですか?」と、司会の方に尋ねられ、

「歯医者さんが、なんで八百屋さんを経営してるのかに興味があって…」とアホな回答。

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その後、すぐに内科・外科であることに気づいてからは、恥ずかしさ10000%のまま、お話を伺う形になったが(涙)、そんな恥ずかしさなど吹っ飛んでしまうほど、ためになるお話だった。(恥ずかしさは、いまでも残ってるけど…)

この日登壇されたのは、旬八青果店を運営するアグリゲートの社長、左今さんと会社の方々、そして、「街の内科外科クリニック」の院長である塙 勝博先生(新谷先生はご不在だった)。アグリゲートの取り組みについては、さまざまな記事で紹介されているので書かないが、「街の内科外科クリニック」の院長である塙先生のお話が、素晴らしい内容だったので少しだけ書く。

 

トークイベント

 

「街の内科外科クリニック」とはどんなクリニックか?

街の内科外科クリニック」は、訪問診療と緊急往診を専門に行っているクリニック。

終末期医療への対応が多く、イベントが行われた前日にも、旅立たれた方がいたことを伺った。緊急往診は、もちろん24時間365日対応。そんな忙しいクリニックが、なぜ八百屋さんの経営をするのか?そこには、さまざまなお考えがあった。

2階は保険医療、1階は予防のための“社会的処方”のスペース

もともとアパレル会社が入っていたというおしゃれな建物にある「街の内科外科クリニック」は、2階が事務スペース(訪問診療から帰られた先生方が、ここでカルテを書いたりするようだ)。1階が八百屋さんになっている。

2階は保険の診療のためのスペースであり、1階は八百屋を通して行う病気の予防ための社会的処方(塙先生は、こう呼んでいる)を行うためのスペースと捉えて運営しているそうだ。

病気の予防とは、旬の野菜や無添加のお惣菜、お弁当を提供し、食べてもらうことで、地域の方々の健康を支えていく。ということだが、その取り組みのために「旬八青果店」を選んだのには、もうひとつの大切な理由がある。

それが、旬八青果店が実践する「ゆるやかなコミュニティ」の創造だ。

八百屋さんに買い物に来たお客さんと店舗スタッフが、野菜や果物の話題でつながり、さらにはお客さん同士がつながっていく。そんなゆるやかなコミュニティーが、健康維持には欠かせないことなのだ。

こんなデータもあるらしい。

健康への影響が大きいのは、運動か?コミュニティか?

これを調べるために、4つのグループに分けて健康状態(寿命の調査だったかもしれない)をチャックした。

最も成績が良かったのは、もちろん、運動も行い、サークル活動などにも参加しているグループ。当然、どちらもやっていないグループが最も成績が悪かった。ここまでは、予想通りだろう。

では、運動だけを行なっていたグループとサークル活動だけに参加していたグループで、成績が良かったのは?

なんとなく運動?と思ってしまいがちだが、これが、サークル活動を行っていたグループの方が成績が良かったというのだ。

もちろん、サークル活動に参加していれば、何かのイベントのためにその場所に行く(歩く)ことが必要になるので、自然に運動することにもなるだろう(あ、タクシーを使うという方法もあるか?笑)。

とはいえ、「人には、何よりもつながりが必要だ」ということの証明にはなるはずだ。

このお話を伺って、地域医療に関わるクリニックが八百屋さんを経営することの意味が、理解できた。

塙先生が今後チャレンジしたい取り組み

 

塙先生は、今後チャレンジしたい取り組みとして、以下の3つを挙げられていた。

 

①高齢者の孤食を目黒区との連携で支援する

旬八青果店がつくる栄養バランスの取れたお弁当を、一人暮らしの高齢者に届けるということなのだが、重要なのは“届ける側”にある。

塙先生は、このデリバリー役を、高齢者にやってもらおうと考えているのだ。

配達するのだから、当然、歩く。配達先では、いろいろな会話も生まれるだろう。

“届ける側”にとっても、“受け取る側”にとっても、とても魅力的な取り組みだと思った。

②地域ぐるみのイベントを開催する

クリニックの裏にある駐車場でマルシェを開いたり、クリニックのスペースを利用してワークショプをやったり、地域のふれあいを創出したいとも考えているそうだ。

③子供たちに対する教育

また、塙先生は、子供たちに野菜を育てて食べる農業・食育体験だけでなく、「作って、自分で値付けして、売る」ところまでを経験してもらいたいとも考えているようだ。

ひとつの野菜ができるまでに、どんな苦労があるのか。そうして育てた野菜に、いくらの値段を自分たちはつけるのか?

お客さんに買ってもらえたらやっぱり嬉しいだろうし、売れなかった場合も、それはそれで、「なぜ売れなかったのか?」を、また考える機会にもなる。

そんな風に、野菜が作られ、販売され、食べられることの一連を体験した子供たちには、「MBA」ならぬ「MVA」(Vは、Vegetable)を授与したいと考えているようだ(笑)。

どれも、意義深い取り組みだと思う。

今はまだ、青果店自体の黒字化はできていないという。

アグリゲートの左近さんも、「この場所(東急東横線 都立大駅から徒歩15分以上かかる住宅地)では、直営での営業は厳しい」と、告げたそうだ。

それでも、地域の人々のために旬八青果店を、このクリニックに併設したい。と強く願った塙先生、新谷先生の意志に強く押され、準備も十分でないまま、今回のフランチャイズ店舗が実現したそうだ。

トークイベントの最後で、左今さんはこうおっしゃっていた。

「もちろん、商売にとって立地は重要な要素。でも、たとえ立地に恵まれなくても、そこにいる人に意志があれば、お客さんはついてくれるし、お店は必ず成功する。黒字化までに時間がかかるだけなんです」と。

旬八青果店やこうしたクリニックの取り組みがひとつひとつ実を結び、ゆるやかなコミュニティーが、孤立感の増す都市部にも拡がっていくことを祈りたい。

価値あるお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。

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shoji
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